「婚礼ふとんという布団はありません」

というコピーをのせた新聞の折込チラシを今から20年くらい前に
作りました。そのときは、前の寝具販売の会社にいたときです。

それまでは、ずっと寝具専門店の大きな売上を占めていたのが

いわゆる「婚礼ふとん」でした。店舗の中でも婚礼用の寝具は

ふだん使いの寝具とは売り場も別フロアで、ずらっと展示して
あるのがふつうでした。

僕が大学を出て、30数年前に勤めはじめたころはまだ綿の組布団

もありました。側生地が正絹やどんすなどの着物と同じように

小幅の反物を縫製して綿入れした、いかにもの婚礼寝具です。

掛布団、敷布団が2枚づつ、座布団が冬用10枚、夏用10枚とか、

それに客用組布団が2組とか。いったいどこにしまえるの?

というくらいのボリュームでした。

それから、羊毛布団や化繊わたの布団、そして羽毛布団のセットが

が主流になりました。羽毛布団のセットは1組で5点セットが普通。

羽毛の掛布団、肌掛布団、それに羊毛わたの敷きふとんが2枚に枕。

1組で10万~20万円くらいはふつうにしてました。これを2組で

夫婦分です。婚礼の売上が23件あれば100万円くらいになること

も見込めました。

だから婚礼用の新しいすまいにそろえる寝具を購入するお客様を

確保するのが寝具専門店の命綱みたいなところがありました。

でも、それも時代とともにどんどんカジュアルになっていきます。

だいたい、若い夫婦の新居だって最初は狭いアパートやせいぜい

賃貸マンションがふつうですから、寝具ばかり置けるわけもあり
ません。

そんな形式的なセットの寝具でなくても、寝るのは間に合います。

だから、普段使い用の寝具からもっと合理的に選んでいただいても

いいんですよ。というのがチラシのコピーの意味するところでした。

でも、今ではもう「婚礼寝具」という概念がまったくなくなって

しまったようです。だから、それで食べていた寝具専門店は売る

ものを変えるか、買ってもらう人を変えないと商売が成り立たなく

なってしまったわけです。

寝具業界にあった「婚礼バブル」がはじけてしまったのですね。

(つづく)


日本ハムの大谷選手の活躍がしばらく見られそうにありません。
今年も娘との野球観戦は楽しみにしていますが、 交流戦ころまで
持ち越しになりそうです。 残念!